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「うちの会社、退職金ないんですよね」
後輩からそう言われたことが、何度かあります。
僕は施工管理12年目の現場監督です。
そのたびに「就業規則、見た?」と聞き返すんですが、たいてい返ってくるのは「見たことないです」です。
12年やってきて思うのは、退職金の話は「無い」と「知らない」が同じ顔をして並んでいるということです。
本当に無い会社もあります。
でも「あるのに気づいていない」も、同じくらい起きています。
とくに建設業には、他の業界にはない仕組みがあります。建退共(建設業退職金共済)です。
これ、「職人さんの制度でしょ」と思っている現場監督が本当に多い。
僕もそう思っていた時期がありました。
でも公式の加入条件を読むと、除外されているのは「本社等の事務専用社員」なんです。
現場に出ている監督は、文言のうえではそこに当たりません。
この記事では、退職金が「あるかないか」ではなく「自分はどれに入っているのか」を確かめる順序を整理します。
調べたのは制度の公式情報で、僕自身が退職金を受け取った体験談ではありません。
そこは正直に書いておきます。
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建設JOBsで求人を見てみる →①「うちは退職金ない」は、本当にないのか——まず就業規則のどこを見るか

最初に、身も蓋もない事実から書きます。
退職金は、法律上の義務ではありません。
労働基準法に「退職金を払え」という条文はないんです。
だから「うちは無い」という会社は、違法でもなんでもない。
普通に存在します。
じゃあ何で決まるかというと、就業規則の定めです。
会社が「払う」と決めて規則に書いた瞬間、それは支払い義務になります。
逆に書いていなければ、義務は生まれません。
つまり「うちに退職金があるか」の答えは、ネットのどこにもありません。自分の会社の就業規則にしか書いていない。
退職金規程は、本体と別冊になっていることが多い
ここが引っかかりポイントです。
就業規則を開いても退職金の項目が見当たらず、「やっぱり無いんだ」と結論してしまう人がいます。
退職金の細かい条件は「退職金規程」という別冊になっていることが珍しくありません。
就業規則の本体には「退職金については別に定める」の一行だけ、というパターンです。
見るときのポイントは3つです。
- 支給対象:勤続何年から出るのか(3年以上、5年以上などの線引きがある)
- 計算方法:基本給連動か、ポイント制か、外部の共済制度か
- 支給されないケース:懲戒解雇時の扱いなど
就業規則は、労働者が見られる状態にしておく義務が会社にあります。
「見せてください」と言っていいものです。
言いにくければ、社内の共有サーバーや労働組合の資料を探してみてください。
②建退共は「職人だけの制度」なのか【公式の対象範囲を読む】

ここが、この記事で一番伝えたいところです。
建設業には建退共(建設業退職金共済制度)という、業界共通の退職金の仕組みがあります。
国が作った制度です。
現場では「職人さんが証紙を貼ってもらうやつ」という理解で止まっていることが多いと思います。
僕の周りもそうでした。
でも、公式サイトに書かれている対象者はこうです。
建設業の現場で働く人たちのほとんどすべての人が建退共制度の対象者になることができます。
建設業退職金共済事業本部「加入条件」より
国籍に関わらず、現場で働く大工・左官・鳶・土工・電工・配管工・塗装工・運転工・現場事務員など
「現場事務員」まで入っています。職種を限定した書き方をしていません。
では、誰が対象外なのか。
こちらも公式にはっきり書かれています。
事業主、役員報酬を受けている方及び本社等の事務専用社員
建設業退職金共済事業本部「加入条件」より
除外されているのは「本社等の事務専用社員」です。
現場に出て施工管理をしている監督は、この文言には当たりません。
ただし「対象になり得る」と「加入している」は別の話
ここは慎重に書きます。
公式の除外規定に当たらない、というのは事実です。
でもそれは「あなたはもう加入しています」という意味ではありません。
建退共は事業主が手続きをする制度です。
会社が契約を結び、会社が掛金を納めます。
労働者側から勝手に入れるものではない。
つまり「制度上は対象になり得る」と「実際に自分の分の掛金が納められている」の間には、会社の判断というステップが挟まっています。
だから確認すべきは、この2つです。
- 自分名義の建退共手帳(共済手帳)があるか
- 会社が自分を建退共の対象にしているか(総務・事務に確認)
「うちは職員は対象にしていません」と言われる可能性もあります。
それはそれで、はっきりした答えです。分からないまま10年過ごすより、はるかにいい。
ちなみに独立して一人親方になると、労災も含めて立場が変わります。
こちらは別記事にまとめています。
【一人親方 労災 特別加入】は必要?現場監督10年が見た「未加入で困る瞬間」
③退職金が出るのは「会社を辞めたとき」ではなく「建設業を辞めたとき」

建退共でいちばん誤解されているのが、ここだと思います。
公式の記述はこうです。
特定の企業をやめたときではなく、建設業で働かなくなったときに、掛金納付された日数の合計が12月(21日分を1ヶ月と換算)以上あった場合に、受け取ることができます。
建設業退職金共済事業本部「加入条件」より
読み替えると、こうなります。
- A社からB社へ移っても、どちらも建設業なら掛金は通算される
- 受け取るのは「建設業界から離れるとき」
- 掛金の納付実績が通算12月ぶんに満たないと支給対象にならない
建設業は転職の多い業界です。
僕の周りでも、同じゼネコンに定年までいる人のほうが少なくなりました。
普通の会社の退職金は、転職するたびに勤続年数がリセットされます。
3年で辞めて3年で辞めてを繰り返すと、どこでも「勤続3年」の扱いにしかならない。
建退共はその点、業界に居続ける限り積み上がっていく設計になっています。
転職が多い業界の実態に合わせた仕組み、という言い方ができると思います。
逆に言えば、建設業以外へ転職するときは扱いが変わります。その場合の手続きは個別事情によるので、機構か会社に確認してください。
転職を考えているなら、年収だけでなくこういう「見えない条件」も並べて比べたほうがいいです。
【建設業30代の転職】転職先・年収比較・失敗パターンを現場監督10年が解説
④掛金は事業主負担——だから給与明細には出てこない

もうひとつ、気づきにくい理由があります。
建退共は事業主負担の退職金制度です。
掛金を納めるのは会社で、労働者の給料から天引きされるものではありません。
これは、ありがたい話であると同時に、気づけない理由でもあります。
健康保険や厚生年金なら、毎月の明細に控除欄として出てきます。
金額が変われば気づく。
でも建退共はそもそも明細に載らないので、入っていても入っていなくても、明細の見た目は同じなんです。
「引かれていないから、自分には関係ない制度だ」——この推測が、たぶん一番多い勘違いです。
引かれていないのは、会社が払う設計だからです。
⑤共済制度どうしは重ねられない——自分がどれに入っているか確かめる順序

ここまで読んで「じゃあ全部入っておけばいいのでは」と思った方へ。それはできません。
公式の加入条件には、対象外となる人としてこう書かれています。
すでに、建設業退職金共済制度の被共済者となっている方/他の退職金共済制度の被共済者
建設業退職金共済事業本部「加入条件」より
ここで言われている「他の退職金共済制度」というのは、中退共のような共済制度のことです。
つまり共済制度どうしは重ねられません。建退共に入っている人が中退共にも入る、ということはできない仕組みです。
退職金の受け皿は、大きく3つに分かれます。
- 建退共:建設業界共通の共済制度。業界内で通算される
- 中退共:中小企業向けの共済制度。建設業に限らない
- 自社の退職金制度:就業規則の退職金規程で定めるもの
このうち重複できないのは、上の2つ(共済制度どうし)です。
一方、3つめの自社の退職金制度は「共済制度」ではありません。だから「建退共にも入っていて、会社独自の退職金制度もある」という形はあり得ます。
会社によっては、共済を土台にして自社制度を上乗せしている場合もあります。
ここを「どれか一つだけ」と思い込むと、片方を見つけた時点で調べるのをやめてしまいます。共済手帳が見つかっても、就業規則の退職金規程は別に確認したほうがいいということです。
そして「退職金がない」と思っている人の中には、建退共ではない別の制度に入っているだけの人がいます。
この場合、無いのではなく「見ている場所が違う」だけです。
確認する順序(この順が早い)

- 就業規則の「退職金規程」を見る……自社制度があるかが一発で分かる。別冊になっていることが多い
- 手元に共済手帳がないか探す……建退共・中退共のどちらかに入っていれば手帳がある
- 総務・事務に聞く……「自分は退職金の制度、どれの対象になっていますか」と聞けば済む
3番目が一番早いのは分かっています。
ただ、聞きにくい空気の現場もあると思うので、1と2を先に置きました。1と2で分かれば、聞かずに済みます。
ちなみに、こういう「明細に出てこないお金」は退職金だけではありません。
社会保険料も住民税も、仕組みを知らないと損した気持ちだけが残ります。
【建設業 社会保険料】なぜ現場監督は損しやすい?4〜6月の残業が1年分の保険料を決める仕組み
⑥退職金が薄いと分かったとき、制度として何があるか
調べた結果、「自社制度はない」「建退共も対象外だった」という答えが出ることもあります。
その場合に何を勧めるか——というのは、この記事ではやりません。お金の置き場所は、家族構成や住宅ローンの有無で最適解が変わるので、記事から一律に勧めるのは無責任だと思っています。
なので、制度として何が用意されているかだけ並べます。
- 企業型DC(企業型確定拠出年金)……会社に制度があれば使うもの。就業規則で確認
- iDeCo(個人型確定拠出年金)……自分で加入する制度。会社の制度状況によって掛金上限が変わる
- NISA……年金制度ではないが、老後資金の置き場所として使われる
どれも一長一短があって、途中で引き出せるかどうかも違います。
「退職金がないから、とりあえず何か始めなきゃ」で選ぶと、たいてい合いません。
順番としては、まず「自分がどれに入っているか」を確定させることが先です。
それが分かってから、足りない分をどうするかを考えれば間に合います。
NISAとiDeCoの違いは、建設業の働き方を前提に別記事で比べています。
【建設業】でNISA・iDeCoを始めるならどっちが先?現場監督が教える正解は・・
⑦よくある質問【建設業の退職金と建退共】
Q. 現場監督(施工管理)でも建退共に入れますか?
公式の加入条件で除外されているのは「事業主、役員報酬を受けている方及び本社等の事務専用社員」です。
現場に出ている監督はこの文言には当たりません。
ただし加入手続きをするのは事業主なので、実際に対象になっているかは会社への確認が必要です。
Q. 会社が建退共に加入していない場合、自分で入れますか?
建退共は事業主が契約を結ぶ制度なので、労働者が個人で加入する形にはなっていません。
会社が加入していない場合は、自社の退職金規程がどうなっているかを確認するのが先になります。
Q. 転職しても退職金は引き継げますか?
建退共は「特定の企業をやめたとき」ではなく「建設業で働かなくなったとき」に支給される仕組みで、建設業内での転職なら掛金が通算されます。
一方、自社の退職金制度は会社ごとに独立しているため、転職すると原則リセットされます。
Q. 建退共の退職金はいくらもらえますか?
掛金が納付された日数によって変わるため、一律の金額はありません。
支給の前提として掛金納付日数の合計が12月(21日分を1ヶ月と換算)以上必要です。
具体的な金額は、加入状況をもとに機構や会社へ確認してください。
Q. 退職金が無い会社は違法ですか?
違法ではありません。退職金は法律上の義務ではなく、就業規則に定めた場合に支払い義務が生じるものです。
ただし規則に定めがあるのに支払われない場合は別の問題になります。
Q. 独立して一人親方になったら退職金はどうなりますか?
雇われている立場ではなくなるため、扱いが変わります。
独立時にそれまでの掛金がどうなるかは個別の状況によるので、機構に直接確認するのが確実です。
⑧まとめ:退職金は「あるか」ではなく「どれに入っているか」
この記事の要点を並べます。
- 退職金は法律上の義務ではない。あるかどうかは就業規則の定めしだい
- 退職金規程は別冊になっていることが多い。本体だけ見て「無い」と結論しない
- 建退共の対象は現場で働く人のほぼ全員。除外は「本社等の事務専用社員」
- ただし加入手続きをするのは事業主。対象になり得ることと加入していることは別
- 支給されるのは「建設業で働かなくなったとき」。業界内の転職なら通算される
- 掛金は事業主負担だから、給与明細には出てこない
- 共済制度どうし(建退共と中退共)は重ねられない。ただし自社の退職金制度は共済制度ではないので、併存し得る
僕がこの記事で一番言いたかったのは、「無い」と「知らない」を分けてほしいということです。
本当に無いなら、それは早く知ったほうがいい。
まだ時間があるうちに手を打てます。
でも「知らなかっただけ」なら、確認するだけで済む話です。どちらにしても、確かめた人の勝ちです。
まずは就業規則の退職金規程。
次に手元の共済手帳。
この2つだけでも、今週のうちに見てみてください。
※本記事の制度に関する記述は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。
制度の詳細や個別の取り扱いは変更される場合があるため、最新の情報および自分のケースについては、建設業退職金共済事業本部または勤務先へご確認ください。
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では、またー!
今日もありがとう!良き日を😁!

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