【建設業の単身赴任】手当が出ても手取りが増えにくい理由|二重生活のコストを現役12年が整理

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「来月から、○○の現場に行ってくれ」

建設業だと、この一言で生活が変わります。
僕は施工管理12年目の現場監督です。
これまで何人も、single赴任で現場に出ていく同僚を見送ってきました。

そのとき決まって聞かれるのが「手当、いくら出るんですか」でした。
ただ、話を聞いていて思うのは、手当の額を聞いても答えにならないということです。

理由は2つあります。
ひとつは、単身赴任手当が給与として課税されること。もうひとつは、二重生活で増える出費が、手当の枠を超えやすいことです。

この記事では、相場の数字と、そこから引かれるもの、そして就業規則のどこを見れば自分のケースが分かるかを整理します。

先に正直に書いておくと、僕自身は単身赴任をした経験がありません。
だからここに書くのは、制度の情報と、送り出す側で見てきたことだけです。
「実際に住んでみた話」を期待している方には物足りないと思います。

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目次

①現場は動くが、家は動かない——建設業で単身赴任が起きる構造

建設業では現場が移動するが家族の生活は動かせないことを示す図

他の業界の転勤と、建設業の単身赴任には違いがあります。

現場には終わりがある、ということです。

支店や営業所への異動なら、その土地に何年もいることになります。
だから家族ごと引っ越すという選択が成り立つ。

でも現場は違います。
1年で終わる現場もあれば、3年かかる現場もある。
そして終われば、また別の場所です。

子どもが小学校に上がったばかりだったり、配偶者が仕事を持っていたりすると、「じゃあ家族で引っ越そう」とはなりません。
結果として、本人だけが動く。

僕が見てきた範囲でも、単身赴任を選ぶ理由のほとんどは「家族の生活を動かせないから」でした。
本人が望んで選んでいるケースは、あまり多くない印象です。

②単身赴任手当の相場【厚労省の調査では月47,600円】

単身赴任手当の平均額月額47600円を示す図

まず数字から見ます。

厚生労働省の令和2年就労条件総合調査では、単身赴任手当(別居手当)の平均支給額は月額47,600円とされています。

ただ、この数字はあくまで平均です。
実際には会社によって幅があり、そもそも支給されない会社もあります。

単身赴任手当は、法律上の義務ではない

ここは退職金と同じ構造です。
労働基準法に「単身赴任手当を払え」という条文はありません。

支給するかどうか、いくら払うかは就業規則や賃金規程の定めしだいです。
だから「相場は47,600円らしい」と言っても、自分がその額をもらえる根拠にはなりません。

自分のケースを知るには、規程を見るしかない。
どこを見るかは⑤に書きます。

③手当は給与課税される——額面と手取りは別物

単身赴任手当から所得税・住民税・社会保険料が引かれることを示す図

ここが、この記事で一番伝えたいところです。

単身赴任手当は、給与所得に含まれます。
つまり所得税と住民税の対象になります。

通勤手当のように一定額まで非課税、という扱いではありません。
基本給と同じように課税される、と考えたほうが実態に近いです。

だから「手当が月5万円ついた」と言っても、その5万円がまるごと生活費に回るわけではないということです。

さらに、社会保険料にも効いてくる可能性がある

もう一段あります。

健康保険と厚生年金の保険料は、標準報酬月額という区分で決まります。
この標準報酬月額は、基本給だけでなく手当を含めた報酬をもとに算定されます。

つまり手当がついて報酬が上がれば、等級が上がって保険料も上がることがあるということです。

しかもこの算定は、4〜6月の報酬が基準になります(これは業種を問わず共通の仕組みです)。
建設業はこの時期が繁忙期と重なりやすいため、残業が多い年ほど等級が上がりやすい構造になっています。
ここは少し複雑なので、別記事にまとめました。
【建設業 社会保険料】なぜ現場監督は損しやすい?4〜6月の残業が1年分の保険料を決める仕組み

住民税のほうも、前年の所得で決まる仕組みなので手当がついた翌年に効いてきます。
【建設業 住民税】現場監督が「翌年」に苦しむ理由|前年の残業代が今年の請求書になる

整理すると、単身赴任手当は「もらった年に課税され、翌年の住民税にも乗り、保険料の等級にも影響し得る」お金です。
額面の数字だけ見て生活設計を組むと、あとでずれます。

④二重生活で増える費用の内訳

単身赴任で固定費が二重になることを示す対比図

次に、出ていく側を見ます。

単身赴任でしんどいのは、「増える」のではなく「二重になる」ことです。
家が2つある状態なので、固定費がそのまま重なります。

  • 家賃……赴任先の住居。社宅か、自分で借りて手当が出るかで負担が変わる
  • 水道光熱費の基本料金……使わなくても契約している限りかかる。これが2軒分
  • 食費……自炊の習慣がないと外食と中食が増える。ここが一番読みにくい
  • 通信費……赴任先のネット回線を引けば、その分が上乗せ
  • 帰省の交通費……距離と頻度で大きく変わる。月2回帰るのと年数回では別物
  • 日用品の買い直し……赴任の最初にまとまって出る

金額は状況によって差が大きいので、ここでは並べるだけにします。
「合計いくら」という数字は、条件が変わればそのまま当てはまりません。家賃と帰省頻度だけで、月に数万円は簡単に動くからです。

それと、現場を回るための車が別途必要になるケースもあります。
維持費は給与明細に出てこないので見落としやすい部分です。
【現場監督 車 維持費】現場を回る車は年いくら?10年乗ってわかった「削れる費用・削れない費用」

⑤会社が出すもの・出さないもの【就業規則のどこを見るか】

賃金規程で確認すべき5項目のチェックリスト

結局のところ、自分のケースは規程を見ないと分かりません。
探すのは就業規則の本体ではなく、賃金規程や転勤規程のことが多いです。

見るべき項目は5つです。

  1. 単身赴任手当の額と支給条件……何km以上離れたら、など距離要件がある会社も
  2. 住居の扱い……社宅を用意するのか、自分で借りて住宅手当が出るのか
  3. 帰省旅費……月何回まで、どの経路で、実費精算か定額か
  4. 赴任時の引越費用……会社負担か、上限があるか
  5. 赴任手当(一時金)……着任時に一度だけ出る会社もある

3番目の帰省旅費は、扱いを確認しておく価値があります。
実費を精算する形なのか、定額で手当として払われる形なのかによって、税務上の扱いが変わることがあるためです。
ここは会社の規程と精算方法によるので、給与明細と規程の両方を見て、分からなければ総務に聞くのが確実です。

額面と手取りの関係そのものが分かりにくいという方は、こちらも参考にしてください。
【現場監督の手取り】年収別早見表と手取りを増やす5つの方法|現役10年が給与明細で解説

⑥建設業は単身赴任が「繰り返される」——一度きりではない

建設業では単身赴任が繰り返されることを示すタイムライン

最後に、業界特有の話をひとつ。

他業界の転勤は、数年に一度の出来事です。
でも建設業の場合、現場が終われば次の現場があります。

つまり単身赴任は「一度耐えれば終わり」ではなく、働き方そのものとして続く可能性があるということです。

これは家計の組み方に関わります。
1年だけなら貯金を取り崩して乗り切る、という判断もできます。
でも5年10年と続く前提なら、取り崩しではなく回る形にしておかないと持ちません。

僕が見送ってきた同僚を思い返すと、しんどそうだったのは赴任そのものより「次もまたある」と分かったときでした。
お金の面でも、気持ちの面でも、そこが分かれ目になっていた気がします。

⑦よくある質問【建設業の単身赴任とお金】

Q. 単身赴任手当は必ずもらえますか?

いいえ。単身赴任手当は法律上の義務ではなく、就業規則や賃金規程に定めがある場合に支給されるものです。
支給の有無・金額・条件は会社によって異なります。

Q. 単身赴任手当に税金はかかりますか?

はい。単身赴任手当は給与所得に含まれ、所得税・住民税の対象になります。
通勤手当のような非課税枠の扱いとは異なります。

Q. 帰省旅費は非課税ですか?

一律に非課税とは言えません。
実費を精算する形なのか、定額の手当として支払われる形なのかによって扱いが変わることがあります。
自分のケースについては、会社の規程と給与明細を確認し、必要なら総務や税務署に確認してください。

Q. 単身赴任手当がつくと社会保険料は上がりますか?

上がる可能性があります。
健康保険・厚生年金の保険料は手当を含めた報酬をもとにした標準報酬月額で決まるため、報酬が増えれば等級が上がることがあります。
ただし等級は幅で区切られているので、必ず上がるとは限りません。

Q. 転勤の辞令は断れますか?

これは労働契約と就業規則の内容によります。
勤務地を限定して契約している場合と、限定していない場合とで扱いが変わります。
個別の事情(介護や育児など)が絡む場合もあるため、一般論では判断できません。
困っている場合は、社内の相談窓口や労働局の相談コーナーなど、事情を踏まえて聞ける先に相談してください。

⑧まとめ:手当の額ではなく、残る額で考える

要点を並べます。

  • 単身赴任手当の平均は月額47,600円(厚労省 令和2年就労条件総合調査)。ただし支給は法律上の義務ではない
  • 手当は給与所得=課税対象。額面がそのまま生活費になるわけではない
  • 標準報酬月額に影響し、社会保険料の等級が上がることもある
  • 翌年の住民税にも乗る
  • 出ていく側は「増える」ではなく「二重になる」。固定費が2軒分
  • 自分のケースは賃金規程・転勤規程にしか書いていない。見る項目は5つ
  • 建設業は単身赴任が繰り返される。一度きりの前提で家計を組まない

単身赴任の話になると、どうしても「手当いくら?」から入りがちです。
でも本当に見るべきなのは、そこから税金と保険料を引いて、二重になった固定費を差し引いて、最後にいくら残るかのほうです。

辞令が出てからでは、規程を読む時間はあまりありません。
まだ関係ないと思っているうちに、賃金規程の単身赴任の項だけ目を通しておく。
それだけで、いざというときの判断がだいぶ楽になります。

※本記事の制度に関する記述は2026年8月時点の情報にもとづきます。
単身赴任手当の平均額は厚生労働省の令和2年就労条件総合調査によるもので、最新の調査では数値が変わっている可能性があります。
税務上の取り扱いは個別の事情によって異なるため、具体的な判断については勤務先または税務署へご確認ください。

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